近年では、言語習得における研究分野の一つである外国語(第二言語)習得の理論はさまざまな立場より研究されています。人がコミュニケーションをとるための言語は大昔から使用されています。それと同時に複数の言語を操ることができるバイリンガルやポリグロットも存在していました。しかし、外国語(第二言語)習得の理論が盛んに研究され始めたのは1940年代ごろと、言葉の歴史と比べてつい最近なのです。今回は、第二言語習得において主要な3つの理論を紹介していきます。
行動主義
「言語学習とは聞いたものを模倣し、何度も練習することで習慣を形成していくこと」だという考えが基になっている、行動主義の理論は、1940年代から70年代に主流でした。学習者は音声を聞き、会話と文系を覚えることで第二言語を習得すると考えられていたのです。また、第一言語で得た知識や習慣が第二言語に干渉するとも考えられていました。しかし、学習者の犯す誤りのほとんどが第一言語から予想できるものとは限られなかったため、行動主義の理論は次第に批判されるようになりました。しかし、近年第二言語習得の研究が進むにつれ、再びこの理論は見直されるようにりました。
生得主義
行動主義に代わって台頭してきたのが、生得主義です。これは、Chomskyが提唱した人間は生得的に言語を話す機能である普遍文法(Universal Grammar : UG)を持っているという考えを第二言語習得に応用しています。また、この考えを基にした理論にモニターモデルというものがあり、Krashen(1982)は、次の5つのモデルを用いて説明しました。これらのモデルは、他の研究者に批判を受けたこともありました。しかし近年、内容・タスク中心の教授法といったコミュにカティブな教授法が普及してきたことで、再び注目を集めています。
言語の習得と学習を区別し、言語の習得は言語形式を意識せずに理解できる言語サンプルに触れるときに起こるとした。
第二言語使用者は自然なコミュニケーションの際には既に習得している知識に頼るとした。
第二言語使用者は自然なコミュニケーションの際にはすでに習得している知識に頼るとした「モニター仮説」第二言語習得にも第一言語と同様に予測可能な習得順序があるとした。
習得は理解可能でi(既に習得した言語知識)+1を含む言語に触れたときに生じるとした。
理解可能なインプットに大量に触れても、必ず成功するとは限らないとした。
認知心理学
そして、言語の発達と認知的能力は関係しているという考えを基にしている認知心理学的視点から見た第二言語習得の理論では、学習の一般理論において、第一言語や第二言語の発達を説明できるとし、学習がどのようなプロセスで起こるのかを明らかにしようとしています。情報処理モデルでは、初級学習者は処理できる言語情報は非常に少ないために、文の生成や文章や会話の全体を理解するまでには時間がかかってしまうが、上級者になるにつれ、言語情報の処理が自動化され、文の生成や文章・会話の理解がスムーズになるとのことです。他に、言語項目の使用頻度や他の文法や語彙同士の共起に注目した使用依拠の学習や特定の意味に関係した多数の言語に触れることで学習者は特定の意味を示す「cue」を学んでいくとする競合モデルも提唱されました。それに加え、近年では技術の発展により、fMRI等の医療機器を用いて脳の活動を可視化することができるようになり、言語と脳の研究も行われるようになってきました。
まとめ
今回は外国語(第二言語)習得を説明する3つの主要な理論について紹介しました。第二言語学習を説明する理論は、多くの方面から研究されており、それぞれの考えを展開しています。一時主流であった行動主義の考え方は、第二言語学習の説明には向かないとされた時期もありましたが、研究が進むにつれ見直されるようになりました。モニターモデルも内容・タスク中心の教授法といったコミュにカティブな教授法が普及してきた中で、注目を集めることになりました。これらのように、他の研究や教授法の発展に伴い、批判を受けた理論が再び見直されることもあるのです。つまり、現在主流でない理論も将来、研究の進歩により第二言語習得の主要な理論となる可能性もあります。