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文法の習得に順番はある?〜第二言語学習のしくみ〜その1

 外国語学習をする人にとって、第二言語習得の知識を知ることはとても大切です。外国語学習者が、第二言語の発達順序を理解すれば、自身がどの段階にいるのか、次の段階に進むためには何をする必要があるのか、どの点でつまづきやすいのかを見極めることができ、効率的な学習をすることができます。そこで質問です。人が言語を獲得していく段階で、習得する文法の順番にに法則性があると思いますか?



文法習得に決まった順番はある?

 第一言語(母語)習得において、文法は決まった順番で学ばれることがBrown(1973)によって明らかにされています。第一言語学習者はほとんどが子供であり、そのほぼ全てが言語獲得に成功します。それに対して、第二言語学習者は年齢や学習環境といった異なる性質をもっています。しかし、第一言語学習者と同様に第二言語学習者においても学習者の発達順序に共通点が見られることが、Krashen(1982)によって明らかにされました。第二言語学習者の学習では以下のような順序で習得が行われます。



第1段階
  • 進行形(-ing)
  • 複数形
  • 繫辞(けいじ / to be)


  • 第2段階
  • 補助動詞(He is going などの進行形)
  • 冠詞


  • 第3段階
  • 不規則動詞の過去形


  • 第4段階
  • 規則動詞の過去形 -ed
  • 三人称単数現在の-s
  • 所有の’s


  • 母語が違ったら発達順序も異なる?

     驚くべきことに、学習者の母語が異なっていても第二言語の発達順序は極めて似ているといいます。しかし、母語の影響が全くないというわけでもなく、英語の’sとよく似た所有形のあるドイツ語、デンマーク語といった言語を母語とする学習者は、所有形形成の方法が異なるフランス語やスペイン語を母語とする学習者よりも英語の所有形の習得が早く、スラブ諸言語、中国語、日本語などを母語とする学習者は英語が堪能になっても冠詞で苦労することが多いそうです。



    参考資料

    Lightbown, P.M. and Spada, N. (2013). How Languages are Learned: 4th ed. Oxford University Press

    学生時代は英語が一番の苦手教科だったにも関わらず、とある出来事がきっかけとなり言語の魅力に取り憑かれる。現在は、子供から大人まで言語の指導にあたりつつ、自身も数カ国語を学ぶ日々を過ごす。